子宮の入口(子宮頚部)にできる癌です。日本では、婦人科領域で子宮体癌に次いで多い癌です。
一部の組織型(胃型腺癌など)を除いて、ヒトパピローマウイルスの感染が発症の原因とされています。
典型的には不正性器出血です。特に性交時の出血が要注意です。余程進行しない限り痛みを訴えることは稀で、20歳以上に子宮癌検診が勧められています。
産婦人科診察である通常の内診、細胞診で、まず疑いが持たれます。
その上で、必要であれば、拡大鏡であるコルポスコピーやねらい生検(組織診)が行われます。顕微鏡で検査して、癌、前癌状態などと診断されます。
癌と確定すれば、治療法の決定のため、断層写真であるCT、MRなどが行われます。腫瘍マーカー検査(血液検査)や膀胱鏡なども行われます。
子宮頸癌では、進行期(癌の広がり)は、手術や放射線治療などの治療前に、主に内診で決定するように規定されています。
詳細は省略しますが
I期:癌が子宮頸部に限局する
II期:癌が子宮頸部を超えて広がるが、骨盤壁や膣の下1/3には達しない
III期:癌が子宮頸部を越え、骨盤壁に達するか、あるいは膣の下1/3に達している
IV期: 膀胱や直腸の粘膜まで広がっているか、あるいは小骨盤腔を越えている
進行期別には、大体以下のごとくとなりますが、年齢、合併症、既往歴、全身状態などを総合的に判断して決定します。
Ia期 (微小浸潤癌):
Ia1期には、子宮摘出(リンパ節を取らない)あるいは円錐切除術が行われます。Ia2期には、下記Ib期と同様に広汎性子宮全摘術が行われます。
Ib期、II期:
広汎性子宮全摘術(子宮の周囲を含めて広く切除する手術)とともに、場合により、放射線治療や化学療法が追加されます。
なお、II期については、日本では主に手術を中心に、手術+放射線治療、手術+化学療法、化学療法+手術などが行われてきましたが、近年、癌が大きい時やリンパ節転移が著明な時などには放射線療法と化学療法の同時併用療法が行われます。
III期、IV期:
同時化学放射線療法が行われることが多くなっています。
子宮の奥(子宮体部)にできる癌です。日本では、婦人科領域で1番多い癌です。2つのタイプが存在し、1つのタイプの発癌には女性ホルモンであるエストロゲンが関与しています。
閉経後に多いとされていますが、閉経前にも発生します。お産をしたことのない人、肥満、高血圧、糖尿病などの人に多いとされています。
また、乳癌の既往のある方にも高率に発生します。
不正性器出血が典型的です。血性帯下、腹痛のこともあります。
常のいわゆる内診では直接みえませんので、細胞診(子宮の奥)や超音波検査が、子宮体癌発見のきっかけとなることが多いです。
子宮体癌が疑われた場合には、子宮内より組織を採取し、それを顕微鏡で調べて診断されます。
子宮体癌であれば、その広がりを検索するため、CT、MRなどの検査が行われます。
詳細は省略しますが、手術にて摘出した物を顕微鏡で調べて決定します。子宮体癌ではI期での発見が多いですが、リンパ節に転移がみられますとIII期となります
進行期がⅠA期であれば、腹腔鏡下手術(ロボット支援下手術を含む)が可能です。進行期ⅠB以上であれば、開腹手術が行われます。子宮、両側の卵巣、卵管の摘出およびリンパ節の郭清が行われます。
場合により、化学療法や放射線治療の追加が行なわれます。
卵巣腫瘍は、病理組織検査という顕微鏡検査にて、良性腫瘍、境界悪性腫瘍(中間群)、悪性腫瘍の3つに分けられます。悪性腫瘍は、発生する場所により「上皮性腫瘍」、「胚細胞性腫瘍」、「性索間質性腫瘍」の3つに大きく分類されます。その内、上皮性の悪性腫瘍を卵巣癌と呼びます。
卵巣癌は、日本では子宮体癌、子宮頸癌に次いで3番目の発生数ですが、その予後は3つの中で最も不良な(治りにくい)癌として知られています。
日本の卵巣癌罹患数は毎年約8,000~9,000人で、1年間に4,500人がなくなられています。 卵巣は腹腔内臓器であり(卵巣は、胃、腸、肝臓、脾臓などとともに、腹膜という袋にはいっている)、腫瘍が発生しても自覚症状に乏しく、また適切な検診法がなく、卵巣癌の約半数がⅢ、Ⅳ期の進行した状態で発見されます。卵巣癌患者の約70%に化学療法(抗癌剤治療)が必要とされます。
症状が出にくい疾患です。かなり大きな腫瘤となって、あるいは腹水がたまって、お腹が出てきた、お腹が大きくなってきたなどの症状で受診されることが多いです。
不正性器出血や帯下などの婦人科的な症状は稀です。無症状で、内科的な検診や他科の超音波検査にて腹部腫瘤が発見されることもあります。
まず、内診とともに超音波検査が重要です。腹部に腫瘤が発見されると、必要な場合には断層写真であるCT、MRなどの検査が行われます。また、血液検査で腫瘍マーカーが測定されます。卵巣の悪性腫瘍が疑われる時は、他臓器からの転移のこともありますので、胃、腸、肝臓、膵臓、乳腺など他臓器の検査が合わせて行われます。
ただ、卵巣癌か否かは、病理検査(顕微鏡検査)で決まりますので、原則として手術で腫瘍を摘出してから悪性か否かが最終診断されます。
腹水が多量に貯留している場合にはその水を抜いて細胞検査で決定されることもあります。
開腹手術や、腹腔鏡下手術(審査腹腔鏡)で、癌の広がりが確認され、決定されます。 ここには、詳細は記載しませんが、他臓器の癌と同様、I~IV期に分類されます。
原則として、開腹手術を行います。まず、腫瘍を卵巣、卵管ごと摘出する付属器切除術が行われます。
術中、病理組織検査(顕微鏡でみる)にて、卵巣癌と診断された場合には、子宮摘出、両側付属器の摘出、大網切除、リンパ節郭清などが行われます。
進行期すなわち癌の広がりによって、その後化学療法(抗癌剤治療)を行います。卵巣癌の約70%の人にはその必要があります。
若い人でどうしても将来子供を生みたい場合には、種々の専門的条件を満たせば、子宮および対側の卵巣を残す手術(妊孕性温存手術)を選択できる場合もあります。
原則として、両側の卵巣+卵管切除(付属器切除といいます)、子宮摘出、大網切除(胃から垂れ下がっている脂肪の膜のようなもの)、リンパ節の郭清(下腹部のリンパ節のみならず、もっと上の方の傍大動脈リンパ節と呼ばれる部分を左腎臓の静脈レベルまで取る)が行われます。
癒着が強い時、癌が広がっている時は、腸、尿管、膀胱などまわりの臓器の一部も一緒に取らなければならないこともあります。
その時は、腸をつなぐ、稀には人工肛門の造設が必要になることもあります。逆に摘出不可能な場合には、一部の切除や検査のみに終わらざるを得ないこともあります。
患者さんの年齢が若く、将来子供が欲しいとの希望が強い場合には、種々の専門的な条件がそろえば、このような卵巣癌根治術を行わずに、例外的に、片側の付属器摘出のみを行い、子宮と対側の卵巣、卵管を残すことも可能とされています。
卵巣癌が発見された患者の約70%に、化学療法(抗癌剤の点滴)が行われます。
その理由は、卵巣癌は進行した状態で発見されることが多く、半数以上の患者さんが初回手術では腫瘍を取り切れずに腫瘍が残る、腫瘍を完全に切除しても再発率が高いこと、また、抗癌剤が効きやすい癌であることなどです。
現在、標準治療としては、パクリタキセルとカルボプラチンという抗癌剤の併用が勧められています。高い効果が期待されています。
副作用としては、白血球や好中球の減少、血小板の減少、腎臓の働きの低下、過敏症(アレルギー)、肝臓への影響、手足の関節痛、筋肉痛、しびれ感、脱毛、吐き気などの可能性があります。
効果も副作用も個人差が大きいと考えられます。
以上、簡単に婦人科癌について述べましたが
婦人科癌の標準治療や専門医などに関しては、日本婦人科腫瘍学会のホームページに記載されています。
また最初にもお断りしましたが
当院は積極的に病診連携に取り組んでいます。
まず近医開業医あるいは1次、2次病院産婦人科を受診され、さらに精密検査や入院治療が必要な場合に紹介状を持参され、当院を受診されますよう重ねてご協力の程、お願い申し上げます。