緩和ケアは、病気と共に生きる人の生活・人生・いのちを支える医療です
がん(悪性腫瘍)などの重篤な病気にかかった時、これまで通りの生活を送ることが難しくなることが増えてきます。
たとえば、病気によって引き起こされる身体の不調だけでなく、これからどうなっていくのだろう?という不安を感じて、眠れなかったりすることがあるかもしれません。
今後の治療方針を決める際に、迷いを生じることもあるでしょう。
治療が開始されると、治療のために仕事を休まなければならなくなったり、収入が減って高額な医療費が家計を圧迫したりすることもあります。時には、治療による副作用や合併症、後遺症の問題が出てくることもあります。
そして、その病気によって患者さんだけでなく、そのご家族にも影響が及ぶことも多く、患者さんとご家族は、さまざまなつらさを経験することになります。
当院では、病気によって生じるさまざまなつらさや支障が出来る限り少なくなるように、患者さんとご家族が病気と共に生きていくことを支える医療(=緩和ケア)を提供しています。
緩和ケアが必要な病気は、がんだけではありませんが、当院は、地域がん診療連携拠点病院(高度型)として、がんの患者さんに対する緩和ケアには特に力を入れており、主治医と担当看護師による基本的な緩和ケア以外に、専門的な知識・技術を持つ多職種によって緩和ケアを提供する体制を整備しています。
人によって多少の違いはありますが、がんと診断された直後から緩和ケアは必要です。そして、がんに対する治療中も、がん治療を終了した後も、さまざまな職種が連携しながら、患者さんとご家族を支える緩和ケアを提供しています。
当院の緩和ケアセンターは、以下に挙げる複数の緩和ケアの提供体制を統括し、地域の医療機関とも連携しながら、この地域全体の緩和ケアを充実させる役割を担っています。
<緩和ケアセンターの理念>
その人らしく生きることを地域の輪で支えます
がん相談窓口
がん看護外来
地域医療機関との連携
緩和ケア外来
がんサポートチーム
緩和ケア病棟
毎週月曜・火曜・木曜の午後(13~16時)に外来診療を行なっており、曜日ごとに診療内容が異なります。
医師だけでなく、曜日ごとに異なる診療内容に応じた専門的知識を持つ看護師が同席して診療を行ないます。
完全予約制ですので、院外の方は、紹介元の主治医に紹介状(診療情報提供書)の作成と、当院の地域医療連携室を通した予約をお願いしてください。
診察日と診療内容
月曜日:症状緩和外来
がんによる痛みや吐き気、呼吸困難、身体のだるさ、不眠など、苦痛な症状を緩和する薬を処方して対応する外来です。どのような苦痛を抱えておられるのか、まずはしっかりとお話をうかがった上で、がんによる痛みにはモルヒネなどの医療用麻薬で対応しています。
痛みの治療を適切に行なうためには、痛みに関連する患者さんの日々の情報が必要になります。そのため当院では、「痛みの治療日記」を活用しています。
下記は「痛みの治療日記」の記録用ページと記録の仕方を示したものです。
必要に応じて印刷してご利用ください。
痛みの治療日記(PDF)
痛みの治療日記の書き方の見本(PDF)
定期的に病気の状況を確認するための画像検査は当科外来では行なっておらず、それについては、がん治療を担当する診療科の外来で実施していただくようお願いしています。
火曜日:リンパ浮腫外来
リンパ節郭清を伴うがんの手術後(乳癌、子宮癌、卵巣癌などの術後)に発生したリンパ浮腫を対象としている外来で、リンパ浮腫以外の浮腫は対象外です。リンパ浮腫かどうかは主に問診と視診・触診で判断しており、リンパ管造影などの特別な画像検査は行なっていません。
当院のリンパ浮腫外来では、主にリンパ浮腫に対するセルフケア指導を行い、必要に応じて弾性ストッキングや弾性スリーブの選定と発注をしています。
※当科外来では、医療者によるリンパドレナージは行なっていません。
※当院以外の医療機関でリンパ浮腫の原因となるがんの手術を受けられた方については、現在は新規の受入れをお断りしています。
木曜日:緩和ケア病棟入院相談外来
当院の緩和ケア病棟への入院を希望される患者さん・ご家族と面談し、今後の入院について相談をする外来です。患者さんが来院せず、ご家族だけでの相談も可能ですが、その場合は外来診察料ではなく、家族面談料がかかります。
原則として、緩和ケア医、緩和ケア病棟の看護師長、医療ソーシャルワーカーの3名で相談をお受けし、面談後にご希望があれば緩和ケア病棟の見学をしていただくことができます。
がん治療や生活していく上での心配や不安、身体のつらさなど、看護師に相談したい方はどうぞ「がん看護外来」をご利用ください。
専門分野の知識を備えた看護師が面談し、情報を整理して病状を理解しやすくしたり、今後どうしたらいいかを一緒に考えたりして、患者さんとご家族の不安が少しでもやわらぐよう努めます。
日 時 | 月曜日~金曜日9:00~12:00、13:30~16:00(1枠30分、担当者との調整あり) |
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対 象 | 当院通院中および通院歴のあるがん患者 |
<受診したいとき>
当院「がんの相談窓口」0596-65-5151にお電話ください。相談員がご対応いたします。
診察券の8けたの「ID番号」「患者さんの氏名」と「連絡先の電話番号」をお知らせください。
担当する看護師から、看護外来の日時について後ほどご連絡いたします。
<ご利用料>
がん看護外来は保険診療(1回 200点)です。
※自己負担例:1割の方で200円、3割の方で600円です。
がん治療と同時に、身体やこころのつらさをやわらげる医療を受けることは、治療を続ける患者さんにとって、とても大切なことです。
当院での通院治療を続けながら、困ったときには診療所にもすぐ相談できるように、連携体制をととのえます。
詳細はこちらをご覧ください。
がんサポートチームは、当院で診療を受けている患者さん・ご家族をサポートするだけでなく、その患者さんを担当する主治医や病棟看護師に対しても相談・支援を行なう多職種チームです。
チームを構成するメンバーは以下の通りです。
身体症状を緩和する医師
精神症状を緩和する医師
がん看護専門看護師
がん性疼痛看護認定看護師
緩和ケア認定看護師
緩和薬物療法認定薬剤師
公認心理師
医療ソーシャルワーカー
歯科医師・歯科衛生士
管理栄養士
理学療法士・作業療法士
チームは、主治医や担当看護師からの依頼を受けて患者さんやご家族に関わらせていただきますが、依頼内容によっては、直接患者さんやご家族と接すること(直接的介入)はせず、依頼された医療者を支援することによって間接的に患者さんやご家族を支えること(間接的介入)になる場合もあります。
チームは、必要に応じて依頼された患者さんに対して個別に回診を行なっていますが、最低週1回は、チームメンバーが一堂に会するカンファレンスとそれに基づくチーム回診を行なっています。
現在、緩和ケア病棟を閉鎖しております。緩和ケア対象患者さんの受け入れは一般病棟で対応しております。ご迷惑をお掛けしますが、何卒ご理解いただきますようお願いいたします。 |
緩和ケア病棟は、がん(悪性腫瘍)に対して、今後は手術や抗癌剤投与はしないという方針になっている患者さんが、がんに伴う苦痛があって入院を必要とする場合、その苦痛を緩和することを目的として一定期間入院していただける専門病棟です。
身体症状だけでなく、不安や落ち着きのなさ、夜も眠れないなど、心のつらさも出来る限り緩和することを目指した医療とケアを行ない、その人らしい生活が送れるように、そして可能であれば再び自宅で療養できるように、患者さんとご家族に対して、さまざまな専門職がチームを組んでサポートしていきます。
<当院緩和ケア病棟の理念>
疾患に伴う苦痛を可能な限り緩和し、その人らしく生きることを支えます
<緩和ケア病棟の基本方針>
1)治癒困難な悪性腫瘍の患者さんを対象とし、がんの治癒や延命を目的とした治療は行ないませんが、がんに伴う苦痛や不快な症状を緩和するための治療やケアは積極的に行ないます。
2)患者さんだけでなくご家族もケアの対象となり、患者さんの療養生活に伴うさまざまな苦痛や困難に対処できるよう支援します。
3)医師、看護士、薬剤師、医療ソーシャルワーカー、臨床心理士、管理栄養士、理学療法士、ボランティアなどでチームを組み、患者さんとご家族の生活の質の維持向上を目指したケアを提供します。
4)患者さんの意思、信念、価値観などを尊重し、その人らしく生きることを支えます。
5)患者さんとご家族が住み慣れたご自宅へ戻って過ごしていただけるよう他の医療機関や訪問看護ステーションとの連携を図ります。
6)治療やケアの方針については、必要な情報を提供させていただいた上で、患者さんとご家族のご希望を尊重しながら共に考え決定させていただきます
<当院の緩和ケア病棟の主な入院基準>
1.患者さんとご家族が緩和ケア病棟への入院を希望している
2.入院時に患者さんが自分の病名や病状を理解している
原則として、患者さん自身が自分の病名や病状を理解されており、緩和ケア病棟への入院の希望があることが必要です。患者さんだけでなく、ご家族が緩和ケア病棟への入院を希望されていない場合には、主治医の意向だけで入っていただくことはできません。
患者さんに認知症があったり、本人の意思を確認することが難しかったりする場合には、代理意思決定者(家族など)が本人の意思を推定して判断したうえで、入院していただくことができます。
<緩和ケア病棟のでの入院の目的>
主に以下の3つの目的での入院があります。
1. 症状緩和のための入院:苦痛症状を緩和することを目的とする入院で、症状が緩和されたら退院することを目標とします。
2.終末期ケアのための入院:残り時間が限られた時に看取りを目的とする入院で、終末期の苦痛をできるかぎりやわらげ、安らかな終末期を迎えていただくことを目標とします。
3.レスパイト入院:家族の介護疲れなどによって、一時的に患者さんに入院してもらい、その間に家族に休息をとっていただくための入院です。介護疲れ以外に、介護を担当している家族自身の入院や、出張、旅行、冠婚葬祭など、一定期間家族が不在になることは、レスパイト入院の理由になります。
<当院の緩和ケア病棟で受けられる医療の内容>
痛みなどの症状を緩和するために、放射線治療を行なうことがあります。
必要と考えられる採血検査や画像検査は一般病棟と同様に行ないます。
内科的な治療(輸液や抗生剤投与など)は、一般病棟とほぼ同様に行なうことは可能ですが、病状によっては減量・中止することがあります。
がんに対する手術を行なうことはありませんが、実施した方が良いと思われる外科的処置については、身体への負担を検討した上で、ご本人やご家族と相談し、希望された場合にはそれらの治療を受けていただくことがあります。
胸腔や腹腔穿刺による胸水や腹水の除去は、緩和ケア病棟でも行ないますが、輸血、CVポートの造設、ステント留置、腎瘻造設、骨折の手術などは、一時的に一般病棟への転出が必要になります。
緩和ケア病棟の設備
緩和ケア病棟の病室は全て個室で、特別有料個室が2室、有料個室が6室、無料個室が12室あり、計20床です。
病棟全体が明るく、広く、静かで、温かい環境になっており、病室以外の設備として横に寝たまま入浴できる浴槽のある特殊浴室、ご家族が宿泊できる家族待機室があります。
その他、患者さんやご家族に自由に使っていただけるキッチン、広い畳のスペースがある談話室、屋外庭園、庭園に面したデイコーナーなどがあり、さまざまな面でゆったりと落ち着いて過ごしていただけるような工夫をしています。
特別有料個室
無料個室
病室:20室(特別有料個室2室、有料個室6室、無料個室12室)
種類 | 料金(税込) | 広さ | 設備・備品 |
特別有料個室 | 16,500円/日 | 約26㎡ |
トイレ、洗面台、バスルーム、クローゼット、 応接セット、チェスト、書斎机・椅子、 テレビ2台(無料)、DVDプレーヤー、 ミニキッチン[IH調理器、冷凍冷蔵庫(無料)、 電子レンジ、電気湯沸かしポット] |
有料個室 | 5,500円/日 | 約13㎡ |
トイレ、洗面台、シャワールーム、 簡易ソファ、収納ボックス、テレビ(有料)、 簡易冷蔵庫(有料) |
無料個室 | 無料 | 約13㎡ |
トイレ、洗面台、簡易ソファ、収納ボックス、 テレビ(有料)、簡易冷蔵庫(有料) |
※有料のテレビ、冷蔵庫は院内キャッシュレスカードにて利用可能です。
家族待機室:2室(和室1室、洋室1室)
種類 | 広さ | 設備・家具など |
家族待機室(和室) | 約23㎡ | トイレ・洗面台・座卓 |
家族待機室(洋室) | 約26㎡ | トイレ・洗面台・ソファーベッド2台 |
※1家族につき、原則2泊3日を限度として借りていただけます。
※付添寝具をご利用する場合、1組550円(税込)/1日の利用料がかかります。
談話室
キッチン
屋外庭園
デイコーナー
緩和ケア病棟への入院申し込みの方法
院外からの紹介の患者さん
毎週木曜日の午後に緩和ケア病棟への入院相談を行っており、地域医療連携室を通して予約を入れています。
緩和ケア病棟への入院申込み確認書に患者さんとご家族に署名していただき、診療情報提供書と共に紹介元の医療機関から事前にFAXしていただきます。
当院に通院中の患者さん
毎週木曜日の午後に緩和ケア病棟への入院相談を行っており、主治医からの依頼を受けて予約を入れています。
当院に入院中の患者さん
木曜日に限らず、平日(月曜~金曜日)に適宜相談を行なっており、主治医から依頼があれば、ご家族に連絡をとって面談の日を設定します。
当院に通院または入院中の患者さんについても、緩和ケア病棟への入院申込み確認書に患者さんとご家族の署名が必要です。
緩和ケア病棟への入院申込み確認書(PDF)
入院までの待ち時間について
入院相談の面談時に患者さんの状態を確認し、急ぐ必要があると判断した場合には最短で入院できるようにします。特に、在宅療養中の患者さんが入院を必要とする場合には、一般病棟や他院に入院中の患者さんよりも優先して緩和ケア病棟に入院していただけるようにします。また、緩和ケア病棟から自宅へ退院された患者さんは、必要時に緩和ケア病棟に再入院することができますが、在宅医から連絡があって入院を急ぐ場合には緊急入院の対象となります。(ただし、休日や平日の時間外、または緩和ケア病棟に空床が無い場合には一旦救急病棟に入院してから緩和ケア病棟に移ります)
また、今すぐには入院を希望しないが、あらかじめ相談だけはしておきたいという方の場合には、入院の必要が生じた時点で連絡を入れていただくと、その時点から最短で入院できるように手配します。