皆様には、平素より伊勢赤十字病院の活動にご理解、ご支援いただきありがとうございます。
当院は、伊勢神宮を擁する三重県伊勢市に位置し、明治37年2月1日、日本赤十字社の最初の支部病院である三重支部山田病院として開設され、以来116年にわたり地域医療に努めてまいりました。
三重県、特に県南部の特徴としては、志摩半島から熊野灘に至る海岸線と紀伊山地に挟まれる南北に長い地形が挙げられます。このため、交通アクセスの不備、医師・病院の偏在という問題が以前から指摘されてきました。こうした環境の中、当院は昭和60年に救命救急センターを設置し、その後、地域がん診療連携拠点病院、地域医療支援病院、へき地医療拠点病院の指定を受け、急性期医療を担う病院として成長してきました。しかし、それは依然として急性期から慢性期までの診療が混在するケアミックス型の医療形態でした。そこで、急性期機能をさらに高める目的で、15年程前より村林前院長の下、逆紹介を推進し、地域医療機関との病・診連携、病・病連携によって後方支援を得ながら、従来の病院完結型医療から地域完結型医療へと舵を切ることとなりました。また、派遣医師の減少により診療機能を縮小せざるを得ない施設へは、バディ・ホスピタル・システムを活用して診療支援も行っています。さらに、8年前の新病院移転と同時にドクタ-ヘリ基地病院として県南部の遠距離救急搬送にも対応するようになりました。この結果、現在では紹介率95.4%、逆紹介率117.8%、平均在院日数11.7日という急性期に特化した病院として機能しております。
今後、日本の医療は厳しい環境にさらされます。2025年問題を始めとする少子高齢化により、医療と介護・福祉サービスが一体となった新たなケアシステムの構築が急がれています。また、どの病院においても、自院の診療機能を集約・スリム化し、医療資源を効率的に活用することが求められています。
当院の使命は、地域医療の堅持です。高度な急性期医療を提供し、患者さんが出来るだけ早く住み慣れた地域に戻り、それまでと同様の日常生活が送れるように支援することです。そのためにも広域にカバーできる救急医療体制をより充実させ、医療の質向上に努め、介護・福祉施設も加えた地域連携をさらに強化していきたいと考えます。
現在の日本の医療・介護・福祉はまだ軌道に乗ったとは言えない状況です。伊勢赤十字病院は、人道的見地から利益を求めない奉仕的救護組織として、当院の理念――人道に基づき赤十字病院として質の高い医療を提供します――を遵守し、地域の皆様の健康と幸福を追求していきます。
伊勢赤十字病院 院長 楠田 司