当課は高度急性期医療、3次救急医療に対応したリハビリテーションを中心に提供しており、脳卒中センター(SCU;Stroke Care Unit)、救命病棟や集中治療室(ICU;Intensive Care Unit)などから早期の介入を行っています。他にも高齢に代表される脳卒中、心不全、骨折、肺炎や感染症などによる廃用症候群やがん患者様など、高度急性期以外の患者様にも幅広くリハビリテーションを提供しています。リハビリテーションの分野を診療報酬の疾患別リハビリテーションの区分に大別し、チーム体制を敷くことにより専門性の高いリハビリテーションの提供を目指しています。さらに、質の高い医療の提供が出来るように、多職種との連携強化、医療チームとの協働、チーム医療活動への参画などにも取り組んでいます。急性期治療が終了した後はリハビリテーション専門病院や介護保険下でのリハビリテーションが円滑に行えるよう、様々な外部機関とも連携しています。患者様への医療提供だけでなく、地域の住民や医療介護従事者に向けた研修会や研究会なども実施し、地域の主幹病院としての役割を果たせるように心掛けています。そして、今後は地域連携の促進、病棟勤務リハビリテーション技士の育成、技士個々のキャリア開発などに向け、人材の育成にも注力し地域医療の充実に貢献できるよう努めて参ります。
リハビリテーション医:1名(非常勤)
理学療法士:18名
作業療法士:6名
言語聴覚士:4名
施設基準
心大血管疾患リハビリテーション料(Ⅰ)
脳血管疾患等リハビリテーション料(Ⅰ)
廃用症候群リハビリテーション料(Ⅰ)
運動器リハビリテーション料(Ⅰ)
呼吸器リハビリテーション料(Ⅰ)
がん患者リハビリテーション料
算定加算
脳卒中ケアユニット入院医療管理料
認知機能検査その他心理検査
二次性骨折予防継続管理料
呼吸ケアチーム加算
認知症ケア加算
早期離床リハビリテーション加算(特定集中治療室)
心不全チーム
ICU早期離床サポートチーム(EMT;Early Mobilization Team)
骨折リエゾンサービス(FLS;Fracture Liaison Service)
呼吸サポートチーム(RST;Respiratory Support Team)
造血幹細胞移植チーム
認知症サポートチーム
摂食・嚥下チーム
栄養サポートチーム(NST;Nutrition Support Team)
チームおかげ(糖尿病教育入院・生活習慣病に対する出張指導・透析予防など)
CKDチーム(CKD;Chronic Kidney Disease)
主な対象疾患
・心大血管疾患
心不全や心筋梗塞などの心疾患、冠動脈バイパス術や弁置換術などの開心術後、経皮的大動脈弁置換術後のリハビリテーション(TAVI;Transcatheter
Aortic Valve Implantation)
・脳血管疾患や神経筋疾患
脳出血、脳梗塞、クモ膜下出血、脳腫瘍、神経難病、ギラン・バレー症候群、ALS(Amyotrophic Lateral Sclerosis)など
・廃用症候群
外科・内科を問わず様々な疾患による身体機能が低下した状態
・運動器疾患
大腿骨頸部・転子部骨折、手関節骨折、肩関節骨折、膝靱帯損傷、腱板損傷、外傷、人工関節術後など
・呼吸器疾患
間質性肺炎、慢性閉塞性肺疾患、肺炎、外科術後など
・がん
外科及び血液疾患の化学療法、放射線治療、術後若しくは造血幹細胞移植治療の患者
診療実績
心大血管疾患リハビリテーション
循環器においては心不全、心筋梗塞後やTAVI術前後、そして胸部外科においては冠動脈疾患、弁膜症や大血管疾患術後の患者様を中心にICUや救命病棟などより早期に心臓リハビリテーションを提供しています。なかでも心不全患者様においては多職種と協働し包括的な生活指導も提供しており、心不全チームとのチーム医療を重視しています。心不全チームとの協働においては、患者様への医療提供だけでなく地域の医療介護従事者との連携や地域に向けての研修会を多職種と協働して開催し、心不全患者のADL(Activities
of Daily Living)、QOL(Quality Of Life)の改善や再発予防に務めています。他にも心肺運動負荷試験を用いた運動処方(CPX;Cardio
Pulmonary Exercise Testing)の実施や、ICUにおいてEarly Mobilization Teamを形成し、集中治療領域のリハビリテーションも行っています。
脳血管疾患等リハビリテーション
脳血管疾患、神経筋疾患や脊髄疾患等に対し早期からのリハビリテーションを提供しています。なかでも脳卒中においては発症早期より行われる機能訓練、基本動作訓練や歩行訓練が機能回復に大きく影響を及ぼすため、救急病棟やSCUなどのベッドサイドより早期に介入し積極的な離床を行っています。そして多職種によるカンファレンスも行い、治療の進行状況に合わせたリスク管理に注意を払っています。他にも入院生活での活動量の向上を図るための他職種との取り組みなど、チーム医療を展開することで患者様の機能回復を最大限に出来るよう務めています。
廃用症候群リハビリテーション
消化器疾患、感染症、外傷、代謝性疾患や免疫疾患など、院内のすべての診療科より依頼を頂きリハビリテーションを提供しています。当院では廃用症候群に対する介入は十分とは言えず、今後増加が予測されている高齢化に伴う誤嚥性肺炎や尿路感染症などへの対応を進めているところです。今後、地域と連携し廃用症候群患者様が安心して在宅復帰できるよう院内だけでなく、地域とも連携を進めて行けるように努めています。
運動器リハビリテーション
人工関節置換術、骨折、靭帯損傷や脊椎疾患術後などに対し早期リハビリテーションを提供しています。股関節と膝関節の人工関節においてはラピッドプログラムを実施しており、術前より評価を行い、運動指導や入院後のリハビリテーションの説明を行うことで、患者様に安心して手術を受けて頂けるようにしています。また、大腿骨近位部骨折では、大腿骨近位部骨折連携パスを用いた地域連携や、二次的骨折予防の取り組みとして、骨折の要因である骨粗鬆症について患者様への説明を行っています。他にも、事故やスポーツによる外傷にも対応しており、幅広い整形外科疾患に対し急性期リハビリテーションを提供しています。
呼吸器リハビリテーション
慢性閉塞性肺疾患、間質性肺炎、肺がんや人工呼吸器を要する重症患者様にもリハビリテーションを提供しております。運動療法を中心としたプログラムを早期より実施することにより、運動耐容能、呼吸困難、健康関連QOLの改善を目指しています。他にも、在宅復帰を目指し、携帯用酸素ボンベの取り扱い説明やセルフマネージメント教育にも力を入れており、医師や看護師と連携しチーム医療で患者様のサポートしております。
がん患者リハビリテーション
外科及び血液疾患の治療(手術や化学療法、放射線療法など)により生じた、筋力低下や運動耐容能の低下、歩行機能の低下などに対しリハビリテーションを提供しています。外科領域では術後早期より介入し、特に食道がんにおいては多職種で術前から包括的に取り組み、早期社会復帰に向けて支援しています。血液疾患では、身体機能、ADLやQOLを維持できるよう化学療法や放射線治療と並行してリハビリテーションを提供しています。他にも造血幹細胞移植においては、移植前より多職種で情報共有を行いながらリハビリテーションを実施する事で社会復帰を支援しています。
生活習慣病・糖尿病・透析予防
糖尿病代謝内科の糖尿病教育入院の運動療法の講義や実技指導を提供しています。また「チームおかげ」の活動を通じ、地域医院の生活習慣病患者様への多職種出張指導も行っております。
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脳血管疾患等リハビリテーション
脳血管疾患、脳腫瘍、神経難病、脊椎・脊髄疾患などの患者様を対象にリハビリテーションを提供しています。救急病棟やSCUなどから早期離床をすすめ、機能回復ならびに廃用症候群や合併症の予防に努めています。上肢・手指の麻痺に対し病態にあわせた機能訓練を実施することで機能回復を促し、さらに在宅復帰を目標とした日常生活動作訓練(食事・更衣・トイレ動作・家事動作など)を積極的に行っています。また、環境設定や道具等の工夫(自助具の製作や紹介)を行い、在宅復帰のサポートをしています。そして、多職種カンファレンスの実施や病棟連携を密にすることで、出来る日常生活動作を共有し、離床時間の確保が出来るように取り組んでいます。
運動器リハビリテーション
骨折や腱損傷、人工関節置換術・腱板損傷・脊椎疾患術後などの患者様を対象にリハビリテーションを提供しています。Useful Hand(実際に生活する手)を獲得できるよう早期より介入し浮腫・拘縮などの二次的合併症の予防に努めています。また、装具療法や患者指導を積極的に行い、より効果が得られるように取り組んでいます。肩関節疾患の腱板損傷・人工肩関節においては後方病院と連携しシームレスなリハビリテーションが提供できる体制を整えています。
がん疾患リハビリテーション
頭頸部癌の頸部郭清術後に副神経麻痺を生じた患者様を対象にリハビリテーションを提供しています。肩関節拘縮の予防や疼痛・しびれの軽減を目的に、関節可動域訓練、日常生活動作訓練、自主訓練指導を実施しています。また、医師や看護師と連携し情報共有を行うことで円滑にリハビリテーションが提供できるよう取り組んでいます。血液疾患のがんについては、化学療法・放射線療法・造血幹細胞移植後の患者様に対してリハビリテーションを提供しています。筋力や運動耐容能などの身体機能、歩行機能やADLなどの改善、そしてQOLの維持向上をめざし多職種で連携しながらリハビリテーションを行い、在宅復帰・社会復帰を支援しています。
作業療法室
脳血管疾患等リハビリテーション
脳卒中、脳腫瘍、脳外傷、神経難病などの成人を対象に、ことばの障害(失語症)、発音の障害(構音障害)、記憶・注意・遂行機能などの障害(高次脳機能障害)に対してリハビリテーションを提供しております。特に脳卒中においては、理学療法、作業療法と同じく、発症早期から介入し、各種評価バッテリーを用いて迅速で正確な評価を行い、患者様や医療スタッフに言語症状等をわかりやすく説明できるように努めています。また病初期の急速な症状の変化に応じた適切な訓練を提供するとともに、患者様の不安を軽減できるような関わりを心がけています。
摂食嚥下障害に対するリハビリテーション(飲み込みの障害)
摂食嚥下障害(飲み込みの障害)に関しては疾患にかかわらず介入し、耳鼻咽喉科医とともに嚥下造影検査や嚥下内視鏡検査での評価も行っています。また摂食嚥下認定看護師や管理栄養士、歯科衛生士等と連携した「摂食嚥下チーム」として日々活動しており、できる限り経口摂取につなげられるよう取り組んでいます。
がん疾患リハビリテーション
主に食道がんや頭頚部がんにより生じた嚥下機能低下に対してリハビリテーションを提供しています。特に食道がんでは術前や術後早期から嚥下訓練を開始し、医師、看護師、理学療法士等多職種と連携して、より早期に経口摂取ができるようチームでサポートを行っています。
言語療法室
認定・専門資格 | 取得人数 | |
専門理学療法士(内部障害) | 1名 | |
認定理学療法士(循環器) | 1名 | |
認定理学療法士(運動器) | 2名 | |
認定理学療法士(呼吸器) | 1名 | |
認定理学療法士(代謝) | 1名 | |
認定作業療法士 | 1名 | |
認定言語聴覚士(失語・高次脳機能障害領域) | 1名 | |
認定言語聴覚士(摂食嚥下障害領域) | 1名 | |
登録理学療法士 | 10名 | |
心臓リハビリテーション指導士 | 2名 | |
心不全療養指導士 | 2名 | |
3学会合同呼吸療法認定士 | 7名 | |
認知症ケア専門士 | 2名 | |
栄養サポートチーム専門療法士(NST専門療法士) | 1名 | |
日本糖尿病療養指導士 | 1名 | |
がんのリハビリテーション研修終了 | 10名 | |
ICLS | 1名 | |
福祉住環境コーディネーター | 1名 | |
地域包括ケア会議推進ケアリーダー | 1名 | |
介護予防推進リーダー | 1名 | |
日本DMAT隊員資格 | 1名 |
2024年度
・神津将司.多発性神経障害によりADLが低下したが、装具作成や環境整備を行い自宅退院となったPOEMS症候群の症例報告(口述)第35回三重県理学療法学会. 2025.3.2
・中立大樹.クリニックが行う外来心臓リハビリテーション(座長)
第9回三重心臓リハビリテーション研究会. 2024.11.26
・寺田一貴.頭部外傷による意識障害に対し離床訓練が効果的であった一症例
第51回日本赤十字リハビリテーション協会学術集会. 2024.11.23
・大谷奨.下肢重症外傷に対し、術後早期より神経筋電気刺激を実施し、スムースな荷重歩行を獲得した一例(ポスター)第8回日本リハビリテーション医学会秋季学術集会. 2024.11.03
・千住雄一.特発性間質性肺炎における6分間歩行試験時のDesaturationの背景について検討(ポスター)
第8回日本リハビリテーション医学会秋季学術集会.2024.11.03
・市野佑果.当院における急性脳梗塞患者に対する早期リハビリテーションの実施状況(一般口演)
第60回日本赤十字社医学会総会.2024.10.18
・中立大樹.三重県における糖尿病医療と理学療法士の関わり(シンポジウム)
第98回日本糖尿病学会中部地方会.2024.9.15
・中立大樹.当院における待機的開胸術に対するフレイルの及ぼす影響(一般口演)
第74回日本病院学会.2024.7.4
・池下佳宏.誤嚥性肺炎に対する摂食嚥下チーム介入の現状(ポスター)
第74回日本病院学会.2024.7.5
・中西梨予.当院における摂食嚥下機能・構音機能と舌圧の関係についての検討(ポスター)
第25回言語聴覚学会.2024.6.21
・若井舞.脳挫傷により感音性難聴、高次脳機能障害を呈した症例(ポスター)
第25回言語聴覚学会.2024.6.21
・千住雄一..間質性肺炎における6MWTと呼吸リハビリの実際.東海呼吸リハビリテーションWebカンファレンス(パネルディスカッション).2024.6.17
2023年度
・清水一輝.当院における造血器腫瘍患者のサルコペニア有病率について-SARC-Fを用いた検討(一般口演)
第12回日本がんリハビリテーション研究会.2024.2.11
・神津将司.膵臓癌術後に精神面の悪化が見られたが、多職種による介入により自宅退院となった一症例(一般口演) 第12回日本がんリハビリテーション研究会.2024.2.11
・中立大樹.糖尿病の運動療法(講師)
第52回糖尿病療養指導士育成のための講習会.2024.1.14
・濱口大輔.CRPSを呈した施設入所者に対して、mirror therapyを併用したリハビリテーションの効果検証(一般口演)第57回日本作業療法学会.2023.11.10
・中立大樹.当院のCKDに対するリハビリテーションの関わりと今後の課題(一般講演)
第47回南勢透析医療勉強会.2023.11.9
・中立大樹.糖尿病重症化予防における運動療法(講師)
令和5年度糖尿病重症化予防人材育成研修会.2023.9.30
2022年度
・中立大樹.10年時代に欠かせない運動のコツ(講演)
令和4年度伊勢地区医師会糖尿病市民公開講座.2023.3.5
・中立大樹.地域でつなげるための心臓リハビリの取り組みと課題(座長)
第8回日本心臓リハビリテーション学会東海支部地方会.2022.12.3
・中立大樹.周術期のリハビリテーションの現状と課題(シンポジウム)
第36回日本手術看護学会年次学術集会.2022.11.4
・中立大樹.三重県における糖尿病推進対策の一環としての生活習慣病予防委員会の設置と活動(ポスター)
第8回日本糖尿病理学療法学会.2022.9.4
2021年度
・中立大樹.糖尿病重症化予防における運動療法(講師)
令和5年度糖尿病重症化予防人材育成研修会.2021.12~オンデマンド
・中立大樹.心リハチーム探訪(記事)
HEART nursing vol34.11 71-72.2021
・中立大樹.サルコペニアに対する運動療法の有効性と介入(講師)
第47回糖尿病療養指導士育成のための講習会.2021.10.9
2020年度
・中立大樹.高齢急性心不全患者の退院時転帰先を予測する因子の検討(原著論文)
心臓リハビリテーション(JJRC)26(2)279-285.2020
・中立大樹.心不全再入院予防のための生活活動と食事のポイント(講師)
伊勢赤十字病院地域医療従事者研修.2020.12.10