―鳥インフルエンザの現況・人への感染の危惧―

平成18年10月17日
赤十字健康大学・病気と健康の講座より

山田赤十字病院  小児科  井上 正和

@インフルエンザと普通のかぜはどうちがうのですか
 
普通のかぜの症状は、のどの痛み、鼻水、くしゃみや咳などが中心で、全身症状はあまり見られません。
発熱もインフルエンザほど高くなく、重症化することはほとんどありません。
一方、インフルエンザの場合は38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛などの全身の症状が強く、あわせて普通のかぜと同様の、のどの痛み、鼻汁などの症状もみられます。
さらに、気管支炎、肺炎などを併発し、高齢者や、呼吸器や心臓などに慢性の病気を持つ人は重症化することが多いので、十分注意する必要があります。
Aインフルエンザにはどんな種類がありますか

インフルエンザは、原因となっているインフルエンザウィルスの抗原性の違いからA型、B型、C型に大きく分類されます。
A型にはさらに、ウィルスの表面にある赤血球凝集素(HA)とノイラミニダーゼ(NA)という、二つの糖蛋白の抗原性の違いにより亜型分類されます。
いわゆるA/ソ連型、A/香港型というのはこの亜型のことです。
現在インフルエンザは、ヒトの世界では広く流行しているのは、A/ソ連型ウィルス(H1N1亜型)、A/香港型ウィルス(H3N2亜型)、B型ウィルスの3種類ですが、症状や治療、予防法には大きな違いはありません。(表-1)
Bインフルエンザにかからないためにはどうすればよいのですか

予防の基本は、流行前にワクチン接種をうけることです。
インフルエンザにかかった場合の重症化防止方法として有効とされています。
空気が乾燥すると、インフルエンザにかかりやすくなります。
のどの粘膜防御機能が低下するためですので、外出時にはマスクを利用したり、室内で加湿器などを使って適度な湿度(50〜60%)を保ちましょう。
帰宅時のうがい、手洗いも、一般的な感染症の予防としておすすめします。(表-2)
Cインフルエンザにかかったらどうすればよいのですか

・単なるかぜだと軽く考えずに、早めに医療機関を受診してアドバイスを受けましょう。
・安静にして、休養をとりましょう。 特に睡眠を十分とることが大切です。
・水分を十分に補給しましょう。お茶、ジュース、スープなどを飲むことです。
Dインフルエンザに罹患後、どのくらいの期間、学校あるいは職場を休めばよいのか

インフルエンザに感染し、発症後3〜7日間ウィルスを排出すると言われています。
この期間に患者は感染力があるといえますが、排泄されるウィルス量は経過と共に減少します。
抗インフルエンザ薬の内服によって発熱期間は通常1〜2日間短縮されます。
学校保健法では、「解熱した後2日を経過するまで」をインフルエンザによる出席停止期間としています。
Eインフルエンザ患者の病室や衣類の管理はどのようにしたらよいでしょうか

基本的にはインフルエンザは飛沫感染であり、1〜2m以上は飛びませんし、患者がマスクをしていれば飛沫の発生は最小限に抑えられます。
 
インフルエンザを発症中に使用した衣類にはウィルスが付着していることが予想されますが、これらから感染を起こすことはまれだと考えられます。
使用後は、通常の洗濯をして日なたに干しておけばウィルスの感染は消失します。

高病原性鳥インフルエンザ

●疾病の特徴


1.


トリの疾病としては死亡率が高い、又はウィルスが変化して死亡率が高くなる可能性のある特定のインフルエンザウィルスによるものを言います。
2. ヒトへの感染については感染したトリとの接触等により感染例が知られているが、食品(鶏卵、鶏肉)を食べることによるヒトへの感染は世界的にも報告されていない。
3. 仮にヒトに感染してもヒトのA型インフルエンザウィルスの診断に使う迅速診断キットで、鳥インフルエンザウィルスを検出することが可能であり、また、A型インフルエンザの治療に用いられている抗インフルエンザウィルス薬が、鳥インフルエンザに効果があるといわれています。
表ー1 新型インフルエンザ
・低病原性鳥インフルエンザウィルスに由来
過去の新型インフルエンザ
1918年

スペイン風邪インフルエンザ
         (H1N1)

 病 気 


呼吸器に限局したインフルエンザ

1957年

アジア風邪インフルエンザ
         (H2N2)

1968年

香港風邪インフルエンザ
         (H3N2)

・高病原性鳥インフルエンザウィルスに由来
過去には例が無いが、可能性が危惧されています
1997年

香港でのH5N1型

 病 気 


全身感染、重症肺炎、脳炎、多臓器不全

2003年  香港でのH5N1型 
オランダでのH7N7型

2003〜
       05年

東アジアでのH5N1型

表ー2
 咳エチケット
インフルエンザ患者やそれが疑われる患者さんに対しては、以下の点に注意しましょう。
 咳やくしゃみをする際にティッシュなどで口と鼻を押さえ、他の人から顔をそむけ、1m以上離れる。
 呼吸器系分泌物を含んだティッシュを、すぐに蓋付きの廃棄物箱に捨てられる環境を整える。
 咳をしている人にサージカルマスクの着用を促すといったいわゆる「咳エチケット」の励行を進めることにより、有効な感染対策が実現する。